有峰博物学
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ブナと炭焼き「あがりこ」・・・ブナ炭は、上質ではなかったが、煮炊きや暖房用のほか、農機具をつくる鍛冶炭としてよく利用された。昔の炭焼きや薪取りの名残である「あがりこ」を見ることができる。 「あがりこ」の呼び名は、コブ状の所から「芽が上がる」ことに由来する。これは、積雪期に雪上から出た部分の幹を伐り、新たに切り口から萌芽したものを何年後かに再び伐り、〜繰り返すうちに〜 切り口が治癒組織となってコブ状になったものである。このコブの地上高は、炭焼き当時の頃の積雪深を知る手掛かりになると言われている。秋田県でもブナの「あがりこ大王」と名付けられている。 有峰では、冷タ谷遊歩道や桐山管理歩道で「あがりこ」が多くみられますが、大半はトチノキです(上左)。ブナ(上右)やミズナラの「あがりこ」はその数は少ないものの、西谷や桐山などで確認でき,その地上高は2〜3mです。大正初期まで住んでいた有峰村の元住民が冬季(積雪期)にワカンジキを履き、トチノキやブナやミズナラの木を伐採し、薪炭材などとして利用していた名残です。これらの「あがりこ」の傍らでは有峰村の先人の叡知を回想てきます。 有峰におけるブナ林の階層構造 有峰におけるブナ林の階層構造は、上層、中層、下層、地表草本層(林床)の4つの層からなり、以下のような構造になっている。上層は、ブナが優先し、ミズナラ、サワグルミ、ホオノキ、ハリギリ、キハダ、植林されたカラマツなどが混生する。中・下層は、ヤマモミジ、ハウチワカエデやナナカマド、タムシバ、ハンノキ類などが中層を形成し、下層は、落葉性のオオバクロモジ、マルバマンサク、オオカメノキ、ノリウツギ、ガマズミや常緑性のハイイヌガヤやチチマザサなどが見られる。チシマザサは、別名ネマガリダケとも呼ばれ、ツキノワグマも人間も大好きなタケノコが生える。 地表草本層には、樹木がまだ芽吹かない、早春の明るい光を利用するもの、芽吹いた後の、弱い光を利用する草本とがあり、カタクリ、ニリンソウ、ミチノクエンゴサク、キクザキイチゲやサンカヨウなどとシダ類のヤマソテツやマイズルソウなどがみられます。 |
猪根平樹木園の階層構造 上層部手前が、ブナ、奥にカラマツやミズナラが、中・下層には、ヤマモミジ、ウリハダカエデ、ナナカマドやヤマウルシなどが混生。地表にはマイズルソウ、チシマザサやヒメカンアオイなどが生育する。 ブナの幹には、ツルアジサイ、イワガラミやツタウルシが絡みついている。 ※猪根平樹木園は、道路を挟んだ有峰森林文化村ビジターセンター(VC)の向かいにあり、ブナの観察には最適な場所です。 |
有峰においてブナが優占種の階層構造には、上層にミズナラ、サワグルミ、ホオノキやトチノキなどが混生し、中・下層にヤマモミジ、ナナカマド、タムシバ、マルバマンサク、ツタウルシやコシアブラなどが、地表草木層には、ハイイヌガヤ、チシマザザやマイズルソウなどが生育している(上写真)。但し、構成要因(樹種)は地形や斜度方位により異なっている。 世代交代・・・周囲のブナが寿命で枯死したり、台風や雷、雪崩などで倒れ、ブナの森にぽっかりと穴が開き(ギャップ)、林床に陽光が届くようになると、稚樹が急速に伸びて隙間(ギャップ)を埋め、最後には森を支配する巨樹へと成長する。 |
立ち枯れとツキヨタケ・・・養分の来ない枝が枯れ、樹皮の生長が止まると、芯腐れが広がり、幹は空洞となる。またたく間にツキヨタケなどの菌類に侵され、ブナは立ち枯れとなる。 ブナの倒木に生えるキノコ・・・ブナの寿命は300年前後、寿命尽きた老木は、風や雪で倒れる。倒れてから3〜5年経つと、ナメコやブナハリタケ、ムキタケ、ナラタケ、ヒラタケ、ウスヒラタケなどの美味しいキノコが群がって生えてくる。 また、キクイムシやアリなどの住処になり、その昆虫はアカゲラなどの餌となる。こうして朽ちた倒木は、菌類や小さな昆虫たちによって分解され、やがて土に戻る。その土から、ブナの幼木が育つ。こうした命の循環は、永遠に繰り返されている。 |
有峰の「ブナ帯文化」を生み出した山菜やキノコ 有峰は、有峰林道が開通する6月〜7月は山菜取りに、9月〜10月はキノコ狩りの方々が上山します。 有峰は、年間を通して採取できる山菜やキノコがありますが、資源は有限です。 有峰の山菜とキノコについて紹介します。 ○有峰の山菜:フキ(フキノトウ)、タラの芽、ウワバミソウ(ヨシナ、ミズ)、クサソテツ(コゴミ)、オオバギボウシ(ウルイ)、ゼンマイ、ワラビ、ヤマワサビ、モミジガサ(キノシタ)、ミヤマイラクサ、ギョウジャニンニク、オオイタドリ、セリ、カンゾウ、ネマガリダケ(チシマザサの筍)、ハリギリの芽、ヤマウドの新芽、カタクリ、ニリンソウやオランダガラシなど 秋の味覚:ヤマブドウ、サルナシ、トチの実、マタタビの実、ウワミズザクラの実 ○有峰のキノコ(食用):アミガサタケ、エノキタケ、タマゴタケ、ヒラタケ、シイタケ、マイタケ、ヤマブシタケ、ナメコ、クリタケ、シメジ類(ムラサキシメジやシモフリシメジなど)、ハナイグチ、シロヌメリイグチ、ショウゲンジ、マツタケなど |
※1:有峰には山菜と間違えやすい有毒植物が生育しています。ご注意下さい。 ◇ニリンソウ(山菜)とトリカブト(有毒) ◇オオバギボウシ(山菜)とバイケイソウ(有毒) ◇モミジガサ(山菜)とトリカブト(有毒) ※2:ツキヨタケ、ベニテングタケ、ドクツルタケなどの毒キノコも生えています。ご注意下さい。 詳細は「ありみネット」2021年版の今週の見頃写真を参照ください。 ※3:高冷地で稲作ができなかった有峰村、大正10年(1921年)廃村になるまで、特にワラビやゼンマイは有峰村の住人も大切な食料源として、干しゼンマイやワラビ粉は資金源として利用していました3)。 |