有峰博物学
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有峰を代表する樹種として、ブナ、ミズナラ、トチノキやクロベなどあげられます。
はじめにブナについて紹介します。ブナは 雄大でその美しい姿から「森の女王」といわれ、ブナの森は落葉を含む土壌の保水力が高いこと(諸説あり)から「緑のダム(天然のダム)」ともいわれています。
ブナがもたらす恩恵について、有峰の植生ブナ帯に分布する動植物を中心に、ブナ帯の文化にも言及します。ブナの基礎知識に関しては、ブナ北限の里 黒松内ブナセンターweb[ブナの基礎知識]を参照・引用しました2)。 |
有峰地区の植物には、富山県内の他の場所と比較し、3つの特徴がみられます1)。 1.広大な面積にもかかわらず、外国から入ってきた帰化植物が少ないこと※ 2.日本海側に特有の植物が多く生育していること アヤメ科のヒオウギアヤメ(下左写真)やツツジ科のイワナシなど 3.富山県では有峰地区とその周辺でしか見つかっていない植物が9種もあること |
一方、最近では有峰でも、キク科のセイヨウタンポポ、ブタナ、ノゲシ、ヒメジョオン、ハルジオン、マメ科のシロツメクサ、ムラサキツメクサなどのいわいる外来種が侵入してきています。 ※有峰の大部分が有峰県立自然公園に含まれ、多くの貴重植物が採集禁止になっています。この自然公園を利用する時には、その豊かな自然環境のバランスを壊すことのないように気をつけなければなりません。
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ブナに関する基礎情報 【分類】ブナ科(Fagaceae)ブナ属(Fagus)ブナ(Fagus crenata) 【分布】北海道西南部から本州、四国、九州の温帯に広く分布しており、冷温帯のことをブナ帯ともいう。垂直的には、北海道50~600m、本州600~1,600m、四国・九州で1,000~1,500に良好な林相が見られる。有峰では、富山県立自然公園内のどこでも観察・確認することができる樹種です。有峰ダム建設時、伐採されたところもありましたが、西谷、東谷、祐延には巨木が今も残っています。 【名前の由来】ブナは漢字で木偏に無と書いて「橅」とされるが、由来は材が腐りやすく役に立たないからとされる。 【形態】落葉広葉樹の高木。生長すると、樹高は30mに達するものがある。樹皮は灰白色できめが細かくて割れがなく、よくコケ類た地衣類が着生、独特の模様のように見える。若い枝は褐色で光沢があり。葉は互生し、長さ4-9㎝、幅2-4㎝の楕円形、薄くてやや固め、縁は波打っていて、鋸歯というよりは葉脈の所で少しくぼんでいる感じになる。秋には黄葉し、、その後落葉する。冬芽は褐色の鱗片に包まれ、茎が伸びた後もそれがぶら下がっている。鱗片が取れても、数年は茎に痕が残る(芽鱗痕)。芽から展開した若葉には長い軟毛があり、後に無毛となる。 花期は春(4 - 5月)。雌雄同株で、葉の展開と同時に開花する。雄花は枝先からぶら下がった柄の先に6 - 15個付いて、全体としては房状になる。花期は秋(10 - 11月)。果実は総苞片に包まれて10月頃に成熟し、その殻斗が4裂して散布される。
【生態】ブナの生育する土地は保水力が大きく湿り気がある森林を形成する。多雪環境に極めて強く、日本海側の気候に適応した樹木とされている。極めて多雪な地域においてはのブナは樹形を変化させ、地を這うような(匍匐型)ものに変わる。有峰では、東谷、西谷、冷タ谷、猪根山など有峰県立自然公園内で随所で見られる。
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ブナの樹冠 猪根平 5月下旬 ブナの実 西谷 8月上旬 |
●ブナが日本海側で純林をつくりやすい理由 その1 1)ブナは、雪の圧力に耐えるしなやかな幹をもっていて、他の多くの木々よりも積雪に強い。 2)雪がドングリを覆い隠すと、乾燥や凍結を防ぎ、動物たちに食べられずに済む。 3)ブナの稚樹は、比較的耐陰性が強く、林床に実生や稚樹の集団をつくり、頭上の木が倒れるのを一定期間待つことができる。 ●ブナが日本海側で純林をつくりやすい理由 その2 1)ブナは耐陰性が高いかわりに生長が遅く、種子初産年齢が40年と高い。 2)200~300年と長寿である。 3)1~2の特徴は、繁殖より大きくなることを優先していることが分かる。この戦略は、攪乱の少ない安定した森の中では有利な戦略である。 4)日本海側は、太平洋側に比べて、山火事や人為的な攪乱も少ない。 ※有峰にはブナの純林はありませんが、冷低温帯の豪雪地帯でブナが生育する条件がそろっています。 |