冬苺とて兎らに残し置く 中坪 達哉
秋雨の音も滝めく山毛欅林 同
〔秀句抄〕
地の色に染まる茸を踏みもして 内山 澄子
身に入(し)むや朽木今なほ湖に立つ 同
樹幹流光の筋となりにけり 菅野 桂子
大木に触れては巡る夏の果て 同
山荘の雨音高し柳蘭 石黒 順子
水際の色なき風に吹かれをり 同
冷タ谷狭霧の湖を右ひだり 太田 賢
湖を渡る風にも秋の声 同
ひと叢(むら)の勢(きお)ひて高き秋薊(あざみ) 小澤 美子
森と湖あとは流るる鰯雲 同
猿待つを知らで採りけり青葡萄 勝守 征夫
ダムに立つ岩燕なる眼にて 同
含みたき清水や息を鎮(しず)めたく 練合 澄子
秋天の星仰がざるうかつさよ 同
みづうみを煽(あお)りて秋の風なりし 大井 孝行
秋澄みていただき蒼く染まりけり 同
朴落葉葉うらに結ぶ雨滴(あましずく) 金森 める子
靴濡らしたる露あると見えねども 同
朽(く)ちる山毛欅(ぶな)茸従えなお威厳 栗島 靖子
床の中より秋天の星仰ぐ 同
東谷秋色(しゅうしょく)深きただ中に 荻沢 明夫
東谷注ぐ秋水今昔 同
枯木立歴史を語る秋の湖 水野 博之
東谷
奔流ぞ夏の名残を轟(とどろ)かす 北見 健
樹木から雫止まざる森の秋 山本 章広