第6回 有峰俳句の会
 〔講師吟〕

冬苺とて兎らに残し置く                  中坪 達哉

 秋雨の音も滝めく山毛欅林                  同

 〔秀句抄〕

 地の色に染まる茸を踏みもして              内山 澄子
 
 身に入(し)むや朽木今なほ湖に立つ            同

樹幹流光の筋となりにけり                菅野 桂子

大木に触れては巡る夏の果て                同

山荘の雨音高し柳蘭                    石黒 順子

水際の色なき風に吹かれをり                 同

冷タ谷狭霧の湖を右ひだり                太田 賢

湖を渡る風にも秋の声                     同

ひと叢(むら)の勢(きお)ひて高き秋薊(あざみ)   小澤 美子

森と湖あとは流るる鰯雲                    同

猿待つを知らで採りけり青葡萄             勝守 征夫

 ダムに立つ岩燕なる眼にて                   同

含みたき清水や息を鎮(しず)めたく          練合 澄子

秋天の星仰がざるうかつさよ                 同

みづうみを煽(あお)りて秋の風なりし         大井 孝行

秋澄みていただき蒼く染まりけり               同

朴落葉葉うらに結ぶ雨滴(あましずく)         金森 める子

 靴濡らしたる露あると見えねども               同

 朽(く)ちる山毛欅(ぶな)茸従えなお威厳       栗島 靖子

 床の中より秋天の星仰ぐ                    同

 東谷秋色(しゅうしょく)深きただ中に          荻沢 明夫

 東谷注ぐ秋水今昔                        同

 枯木立歴史を語る秋の湖                 水野 博之

東谷
  奔流ぞ夏の名残を轟(とどろ)かす          北見 健

樹木から雫止まざる森の秋               山本 章広