第5回 有峰俳句の会

〔講師吟〕

澄むためにただひたすらにながるるや     中坪 達哉

頬寄せてカワラハハコはぬくそうな        同

深秋の()()に一日樹幹流               同

〔秀句抄〕

折立ははにかむほどの薄紅葉         野中多佳子

秋の声聞かむとブナの走り根に          同

小鳥来よオカリナ吹きし窓の辺に         同

展望台腰を下ろせば霧迅し          内山 澄子

秋澄みて磧の石に昼餉かな            同

毒茸笠に雨粒捉へたる              同

木の葉散る爪先上がり膝叩き         高林 保子

吟行をいとわぬ一と日秋しぐれ          同

冷えし指ほぐしギターをつまびくや        同

登り行く一歩一歩に秋の湖          菅野 桂子

山番のとりし茸を疑はず             同

明らみて昨日と違ふ薄紅葉            同

山並を色なき風のわたりけり         細野 周八

禁漁を知るや真川を岩魚行く           同

どんぐりを掌にあたためてギター聞く       同

木の実落つ子連れ多くて猿の群        小澤 美子

霧流ることに激しく湖の上            同

霧の海隠し忘れし薬師岳             同

秋の夕湖畔に霊気忍び寄り          福井 幸子

秋の風渡り真川の石白し             同

折立の滝より秋が広がりぬ            同

噛みくだく木の実に記憶よみがえる      練合 澄子

澄む秋の流れに口をすすぎけり          同

指さすは柳もたせのありどころ          同

紫の毒茸いよよふくらみぬ          石黒 順子

ひそやかに雨垂れの音秋深む           同

咲きすさぶ尾花に雨の降りやまず         同

紅い実はななかまどかや亀の木か       島 美智子

石を踏み瀬音聞きつつ沢の秋           同

秋雨に「ぎゃあていぎゃあてい」永遠の木へ    同

車前(おおば)()の葉裏を垂るる露白し            大井 孝行

さまざまな彩を浮かべて沢の秋          同

ななかまどどの紅よりも紅きかな         同

永遠の木に拾うどんぐり翡翠色        栗島 靖子

秋雨の音高くして川原道             同

流木の年輪に苔枯れそむる            同

秋冷の事務所に響くコピー機音        荻沢 明夫

日の暮れを木の実むさぼり食う野猿        同

紅葉への夢を見ている青葉かな        水野 博之

宝来島見るたびに秋深まりぬ         佐々木広子