カモシカとしばし涼風分け合ひて 中坪 達哉
名も知らぬ花にかがみて木下闇 内山 澄子
沢の水掬ひて夏を惜しみけり 成重佐伊子
ブナ若葉幹を叩けば音はじく 細野 周八
夏草の岸を浸して湖膨れ 勝守 征夫
倒木を橋とて渡る岩清水 松尾 巻子
ときをりは杖を先立て夏の尾根 練合 澄子
笹百合や青春の日の片思ひ 新村美那子
有峰の眠りの湖を蝶渡る 稲田 恵子
湖の見えて小憩青すすき 菅野 桂子
笹百合の花弁の反りに鼻寄せて 中川 正次
我を呼ぶブナの林や夏の雨 岸 公文
のびやかに雨粒つかむ若葉かな 関原 康子
遠雷や砥谷の小径急がずに 柳川 朋美
梅雨晴や山にのぼれば雲の湧く 有倉 祥子