〔特選〕
浮き石につまづく先の夏薊 太田 硯星
山百合の触るるを拒む白さかな 石黒 順子
山泊り涼しき星を寝ねがてに 同
洗ひ髪手櫛にまとめ山泊まり 山下 正江
靴投げて靴下投げて夏の川 同
こけももの熟るるや雨量観測所 同
麒麟草心残りし湖畔かな 堀田 千賀子
川渡る石美しき晩夏かな 同
緑さすみづうみに水切りもして 新井 のぶ子
木苺をてのひらに一つ二つ採り 同
山毛欅を背に長寿ばなしや汗も尽き 坂本 善成
森をゆく日傘に小蝶舞ひにけり 同
緑濃し去年は渡りし吉事山 内田 邦夫
朝露の木株で休む差羽かな 同
帽子とり滝風胸にあおぎ入れ 中川 正次
倒木に腰掛けもして夏の川 同
触れて落つがまずみの実の朱きこと 寺田 嶺子
よろけつつ素足で渡る真川かな 同
白樺を背にあぢさゐの白磁色 舛田 としこ
青嶺横たふ届くかに島ひとつ 同
夏あざみ伸び競ふかに花かかげ 篠原 成一
夏雲に逃げこんでいる薬師岳 同
雲の峰けふも働く男ゐて 篠原 信子
朝露の触れて息づく山毛欅大樹 同
猛暑より逃げ来し我に湖やさし 山澤 美栄子
老鶯や父なつかしき森の道 同
夏の夜を眠れば一つ年を取る 老松 成子
夏空を背負うて登る薬師岳 同
〔講師吟〕
波音を涼しきまでに打ち重ね 中坪 達哉
水音も夏や流れに靴脱いで 同
、一句目 平成28年7月29日 冷タ谷キャンプ場、有峰湖畔、西谷、東西半島
二句目 平成28年7月30日 真川の中州周辺で詠んだもの。