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有峰村民の皆様と、双方向で交流するメールマガジン
有峰森林文化村新聞 2021年1月15日 第456号
編集/有峰森林文化村会議 編集長/吉江 良
(発行日現在の有峰村民人口:1,284人)
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━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆万華鏡の底という平等な神殿体験 中川 正次
◆R2有峰森林文化村への来訪者の動向と来年の文化活動等の予定について
有峰森林文化村
◆編集局からのお知らせ 有峰森林文化村
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◆万華鏡の底という平等な神殿体験 中川 正次
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私は、富山八雲会というラフカディオ・ハーンのことを勉強する会に入っ
ています。毎月、高志の国文学館に集まって、英語を読んでいるマジメな会
です。お勉強だけでは尻すぼみになるので、年1回、遠足があります。有峰
例会です。2020年の有峰例会は、8月1日(土曜日)でした。参加者は、男
4人女6人。
9時に、アルペン村に集合。亀谷(かめがい)で車に乗り合わせて、大多
和峠へ。そこから1時間歩いて、愛着の森で定点観測している「八雲立つ樹」
に巡礼。この県境の尾根道、藪漕ぎ区間が増えてます。2006年8月19日か
ら始めていますから、15年目になります。継続は力なり。元号を使ってい
ると歴史はわかりません。これ、私の持論。
12時半ごろ、冷タ谷(つべただに)キャンプ場に戻って、有峰湖畔のベ
ンチで弁当。食後、キャンプ場の第2キャンプファイアサークルに移動。コ
ーヒー、漬物、チョコレートを楽しみながら、ギター。その間に、各自、五
七五を俳句の先生(中坪さんではない)に提出。その先生は、連句に編むべ
く推敲開始。
そして、先生が完成された連句は、以下の通りでした。
オンザロックならぬ、オン座六句「老鶯や」の巻
老鶯や声降りかかる峠道 三夏
薬師岳には雲の峰立つ 三夏
十人で老樹水楢巡礼に 雑
赤きテープを見つけ歓声 雑
クマザサのトンネル抜けてプチ冒険 雑
青空のもと野外演奏 晩夏
連句の決まりに添うと、月が必要なのですが、今回は当日の感じたまま、
見たままの十人の合同吟といたします。
先生が編んでおられる間に、私は、6月頃から暖めていた実験、すなわち、
キャンプファイアサークルの草地の思い思いのところに、ピクニックシート
を敷いて、みんなに寝そべってもらうという実験をしました。そのことにつ
いて詳しく書きます。
キャンプファイアサイトは、半径10メートルくらいの円です。オオバコ
が生えており、ミズナラがぐるりと囲んでいます。
仰向けに寝て上を見ると、盛夏から初秋にさしかかろうとしている空を雲
が流れてきます。風がミズナラの葉っぱをゆらす音、アカゲラ・アオゲラの
鳴き声も聞こえてきます。まるでミズナラが万華鏡を作り、その中に自分が
入って、底から宇宙を眺めている気持ちです。
石川県能都町の真脇遺跡に、10年ぐらい前の2月、S崎さん、A座先生と
3人で行きました。縄文時代の遺跡です。そこには、ウッド・サークルがあ
りました。大人が3人くらい寝転んでも大丈夫なほどの円があり大理石が敷
きつめられていたように記憶しています。周りに、5メートルくらいの柱が
10本立っていました。
ウィキペディアによると、
遺跡最晩期の土層からは円状に並べられたクリ材の半円柱が発掘された。
10本の柱で囲んだと思われる直径7.4メートルの環状木柱列で、各々の柱を
半分に割り、丸い方を円の内側に向けている。その太さは直径80 - 96セン
チもある。小さな環状木柱列もあり、これらは何度も立て替えられたと考え
られる。同じ石川県金沢市で先に確認されたチカモリ遺跡の環状木柱列(ウ
ッド・サークル)と良く似ており、注目されている。このような巨木を用い
た建物や構築物は巨木文化と呼ばれ、日本海沿岸から中央高地にかけていく
つか確認されている(新潟県糸魚川市の寺地遺跡、富山市古沢の古沢A遺跡、
長野県原村の阿久遺跡など)。
しかし、私は気がつきました。今日、単純にあんな柱がぐるっと囲んでい
る所なんて、危険だから法律が許すわけがない。遠足で子供たちがやってき
て、かくれんぼしたり、鬼ごっこしたり、柱に登ったりすることは避けられ
ません。地面に柱を深く突き刺していたとしても、倒れたり折れることが考
えられます。きっと、柱の中に鉄筋を入れるとか、地面の下をコンクリート
で固めるとかしているに違いないと思うのです。けれど、危険極まりない施
設を縄文時代の人たちは作っていたことになります。
木で囲まれた草地に寝そべって、万華鏡の底に入った気持ちになるという
のは、平等な神殿体験です。
宗教施設を作るのは、大変な資材と労力がいります。出雲大社、伊勢神宮、
諏訪大社、法隆寺、東大寺。そこに入ると、行儀の悪いことはできません。
神官や僧が出てきて注意するでしょう。なかなか覚えきれない作法も存在し
ます。柱に「二礼二拍手一礼」と張り紙があるのはそのためでしょう。お経
には、僧侶のありがたみを増す効果もあると思います。コストがかかり神官
や僧侶が必要となれば、国家体制との分かちがたい関係も生まれてきます。
国家守護のために作られた神殿も多いことでしょう。
それに比べて、有峰のキャンプ場のキャンプファイアサークルはどうでし
ょう。コストが安い。県が、1960年代に湖畔のキャンプ場を作ったとき
に、林の平たいところを、丸く木を切って整地しただけです。私たちは、
「有峰村民村仕事の集い」というボランティア行事を、50人余りで、毎年
7月に開いています。キャンプ場全体の草刈りが主な仕事です。午前中2時
間の作業です。その時に、キャンプファイアサークルに生えているオバユリ
を刈り取ります。毎年生える実に強い植物です。また、焚火のあとの燃え残
りが汚く残っているので片づけます。ただ、それだけのメンテナンスです。
それでいて、寝そべれば、宇宙と対話したような気持になる。自分のやって
いることは正しいのかということも考える。つまり、哲学体験の場になりま
す。
私が有峰に勤務していた初期には、キャンプファイアサークルに、大きな
薪で井桁を組み、灯油で火をつけ、大きな焚火を作り、火の回りでフォーク
ダンスするような行事もしていました。終わったら、バケツの水を何度もか
けて消すという、今から考えれば愚かな行事でした。今は、数人でやってき
て小さな焚火をして楽しむ人が、年間数組おられるだけだろうと想像します。
有峰まで車で出かけ、キャンプ場に直行し、寝そべればいいというもので
はないと思います。やはり富山八雲会にとっては、八雲立つ樹に、藪漕ぎを
しながら巡礼するというステップが効いています。しかし、神官や僧といっ
た介在者がおらず、面倒な作法がなく、建設費や維持費のコストがべらぼう
に安く、しかも、木が倒れてくるという危険がないのは、素晴らしい平等な
神殿だと思います。ギターは神楽と言ってもいいでしょう。
皆さんに、お尋ねしたい。日本の古来からの詩歌に、草地に座るとか寝転
ぶということをモチーフにしたものがあったのか。私には、八木重吉の「草
にすわる」(1925年)しか、思い出せないのです。
草に すわる 八木重吉
わたしのまちがいだった
わたしの まちがいだった
こうして 草にすわれば それがわかる
こんなことを考えていると、二つのことに思いが浮かびます。釈迦が、菩
提樹の根元に座って悟りを開くのではなくて、林の中に丸い草地を作り、そ
こに寝そべって悟りを開いてくれたら良かったのにということが一つ。弥生
時代以降の人だって、林の中に丸い草地を作れば、すごい宗教体験の場にな
るということに、気が付かないわけがないのだけれど、それをやると、神官
や僧侶がいらなくなるので、面白くないと思った人がいたからではないかと
いうことが第二の思いです。
私が、有峰森林文化村を考えていたのは2000年頃のことです。基本に
したのは、梅原猛著、「森の思想が人類を救う」。その「森の思想が人類を
救う」の中に、真脇遺跡のことが書かれています。哲学者の梅原さんには、
文化村の村長になっていただきましたが、有峰に来られたことはありません。
真脇遺跡を横からはご覧になっておられるけれども、ウッド・サークルの中
で寝そべる経験はなさっておられないと思います。経験があれば、本の中に
その話が出てきたに違いないと思うからです。生きておられる間に、冷タ谷
にご案内して、万華鏡の底体験してもらったらよかったのにと、つくづく思
います。
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◆R2有峰森林文化村への来訪者の動向と来年の文化活動等の予定について
有峰森林文化村
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今年度は、春先よりコロナ感染症の影響により、中止・縮小となる行事等
が少なくない中、大変多くの方々にご来村いただきました。この来訪者の実
績と、次年度に向けた課題について報告させていただきます。
(1)文化村施設の利用者数
最初に文化村施設全体の利用者数ですが、全体で17,357人と前年より
2,285人減の対前年比88.4%となりました。以下主な施設の利用者数を掲げま
す。( )内はR1の利用者数です。
・ビジターセンター 5,879人(5,887人)対前年比 99.9%
・有峰ハウス 1,081人(1,293人) 〃 83.6%
・冷夕谷キャンプ場 771人(977人) 〃 78.9%
・芝生広場 8.855人(9,309人) 〃 95.1%
このように、ほとんどの施設でコロナ感染症の影響を受け減となっています。
以下各項目について考察した結果を記します。
① ビジターセンターや芝生広場の利用者数は、主にコロナ感染症が落着
いた年度後半に急回復し、通年としてはほぼ前年並の利用となった。
→都市部のように密になる場面が少ないため、コロナ感染症への懸念を
感じずに、訪れた方が多いものと考えられる。むしろ出歩く機会が少
なくなっていた年度前半の反動で、年度後半は外出する「日帰り客」
が急増したものと思われる。
② 有峰ハウスの利用者数は、主に「GOTOトラベル」が適用された9月以
降は前年度以上の利用(109%)が見られたが、年度前半の減数を補うま
でには至らず、通年としては、前年8割程度の利用に止まった。2割減
は県外客の減にほぼ相当した。
→宿泊施設の利用には、コロナ感染症に対する一定の懸念があるものと
思われた。特に県外客にその傾向が顕著であったと考えられる。
③ 冷夕谷キャンプ場利用者総数は減となったが、宿泊者数は前年度の
128%と、直近5ヶ年では一番利用者数が多くなった。
→コロナ感染症の影響で、ホテルなどの屋内宿泊施設の利用は敬遠され
た一方、屋外施設となるキャンプ場に利用の一部がシフトされたので
はないかと推測される。
このように、コロナ感染症という大きな懸念材料があったにも関わらず、
来訪者の減は限定的であることから、今後も林道小見線(亀谷~猪根平)の
2車線化完成に伴う自然増が、主に県内からの日帰り客を中心に続くものと
考えられます。
(2)文化村活動への参加実績
次に文化活動への参加者数ですが、538名と前年より1,478名減の対前年比
26.8%と、大幅な減少となりました。以下主な数字を掲示します。( )内
はR1の数値です。
・活動件数 46件(43件)、総参加人数 538名(2,008名)
・うち主催行事 19件(21件)、参加人数 326名(1,642名)
・うち補助事業 3件( 3件) 、参加人数 54名 ( 110名)
・うち協力行事 24件(19件)、参加人数 158名 ( 256名)
このように、文化活動もコロナ感染症の影響を受け、1,500人弱の大幅な
利用者減となりました。その大部分が「有峰で遊ぼう」(不特定多数の入込
が懸念されるため中止:約1200人相当)と「高校生学びの森」(学校の日程
遅れと夜の討議時の密回避が困難との判断により中止:3回延べ150人相当)
の2つの行事の中止に伴うものとなっており、その他の行事や案内業務では
それほど大きな減少にはなっておりません。
特に、都市部での多くのイベントが中止となるなか、文化村行事はそのほ
とんどが屋外で実施されることから、密回避は十分可能と判断し、降雨中止
となった行事を除き、以下の点に留意して、「1開催当たりの参加人数を減
らし」、「できるだけ多くの行事を開催する」ことに努めました。
①6月の行事を中止・延期するとともに、密回避が当面困難と考える行事
を中止決定した
②主にバス内や有峰ハウスでの密を回避するため人数を減じて募集した
③バス内での密を回避する措置を行った(マイカー参加への一部移行、人
気行事でのバス増発など)
④「ミニ観察会」(7回)や「森の案内人による個別案内」(18回)な
ど少人数での行事を積極的に実施した。
これらの取組の結果、行事実施回数は昨年より3件多い実績となりました。
(3)次年度へ向けた課題
このようにコロナ感染症の影響により、昨年との比較検証は、数字のうえ
では困難となっています。しかし総じて見れば、「行事の大半をほぼ実施」
することができ、参加減となった部分を、「個別案内等により少人数で対応
した」というのが今年度の実績概要であると考えています。
これをふまえ、次年度においても、引続きコロナ感染症対策の継続が必要
と考えられることから、昨年度設定した「課題の基本的な考え方」にこれを
加味して、取組んでいく必要があると考えています。
(課題の基本的な考え方)
林道小見線がほぼ完成した現在、有峰はもはや「遙か遠い彼方」ではなく、
県内の方が「気軽に日帰り」できる箇所であり、県外の方が「周遊コースに
組込める」箇所になりつつある。このことから一般来訪者の総数は今後加速
していくものと考えることから、①「訪れる方へのこまめな対応」や、
②「文化村の活動に『次は参加しよう』と思っていただけるしくみ作り」が
最も重要になる。
課題①:増加する日帰り来訪者への対応
(対策)
-1 ビジターセンター機能を強化する(特にコロナ感染症対策の観点か
ら、「森の案内人」による少人数での案内活用を積極的にPRする)
-2 今年度、大幅に見直したPR手法(行事リーフレット、LINEお友達設
定、行事個別パンフの地鉄駅での配布、行事PR看板の設置 等)を
充実させる。
-3 問合せの多い、岐阜県山之村地区との連携を進める(年1打合会議
の開催、広域地図の作成、相互PRコーナーの設置 など)
課題②:主催文化活動への参加促進
(対策)
-1 引続き、若者・女性や社会的弱者の方など幅広い層が参加しやすい
活動を企画する
-2 引続き、秘境黒部源流部や巨木など、誇れる特徴を全国に向け発信で
きる内容の行事を行い、有峰ファンを増やすよう努める
-3 コロナ感染症に配慮した行事の形態確保に留意する。(「ミニ観察
会」など少人数での行事開催、人気行事のバス複数台確保など)
-4 これまでの活動実績(行事写真など)・成果(有峰俳壇等)を活用
し、誘客PRに有効利用する。
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◆編集局からのお知らせ 有峰森林文化村
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◇次号の有峰森林文化村新聞は、2月19日に発行予定です。
6月~11月間は二週間毎に、12月~5月間は月1回、第3週の金曜日に発行い
たします。
◇ホームページありみネット
http://www.arimine.net /へのリンク
◇文化サークル活動所/有峰デジタル画廊にどしどし投稿お待ちしています。
(デジタル写真でも絵画(写真に撮って)投稿してください。)
有峰森林文化村新聞は村民の交流の場として利用してください。
◇有峰森林文化村では皆様からいただいた情報やご意見、感想を掲載いたし
ますので、どしどし投稿をお待ちしております。
◇あて先 E-メール:info@arimine.net
有峰森林文化村助役(編集長)
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