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有峰村民の皆様と、双方向で交流するメールマガジン

有峰森林文化村新聞 2018年11月2日 第415号
編集/有峰森林文化村会議 編集長/青山和浩
(発行日現在の有峰村民人口:979人)
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━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ねじばな便り
 ~有峰の熊~                      森永 健一
編集局からのお知らせ                有峰森林文化村

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ねじばな便り
 有峰の熊~                      森永 健一
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 熊がいた。目の前に熊がいた。初夏の朝5時、宿舎の窓を開けたとたん、
目の前に1頭の母熊と2頭の小熊が一生懸命何かを食べていた。よくよく見
ると食べているのはどうも蟻のようだ。わき目もふらず一心不乱だ。

 この時から6年、この有峰では熊の姿を良く目にする。彼らの生活パター
ンには一定のリズムが有るようだ。まず現れる時期。毎年6月末から7月初
めにかけ姿を見せる。
 小熊1頭の場合、母熊と小熊2頭の場合、小熊も赤ちゃんと思える小さい
サイズのもの、小学生レベルの少し大きいサイズと様々だ。ある夏、小熊2
頭と母熊のファミリーが同時に2組現れた。そして単独の小熊1頭。この猪
根平に、7頭の熊が同時に暮らす姿が見れた。この2組のファミリーを見て
いて興味深かった事は、母熊の性格の違い。小熊が母熊から離れたら途端に、
ウッウッとないて小熊に注意を喚起する母熊。一方、小熊がかなり遠くへ離
れても、知らん顔で一心不乱に蟻を食べている母熊。

 昨今の猫ブームで愛猫家が増えているようだが、小熊に限って言えば愛熊
家が増えても良いのではないかと思う。それくらい小熊の表情は愛くるしい。
真っ黒でつやつやの毛、まんまるな瞳、りりしい鼻すじ、まあるい両の耳。
特に、熊の耳は小型の団扇を立てたような形をしており、他の動物にはない
形をして面白い。このように小熊は愛らしいのだが、オスの成獣はとんでも
なく大きな威圧感を感じる。

 ある初夏の小口川第3発電所の下流。岩魚釣りを一人でしていた。ふと上
流を見ると真っ黒い大きな塊が、右手の草むらからゆっくり出て来た。とて
つもなく大きい。その距離10m程か、私はその場に立ちすくんだ。彼は私に
まだ気付いていない(・・・と思えた。)日頃見慣れているメスの成獣とは
比べ物にならない大きさのオスの成獣だ。特に頭部の大きさと肩の筋肉の盛
り上がりは圧倒的だ。これは「化け物」だ・・・そう心の中でつぶやいた。
彼はのそり、のそりと沢を渡り始めた。私は良く覚えていないが、近くに落
ちていた出来るだけ太い木の枝を握りしめ、目をつむり彼が渡り切るのを待
っていたと思う。彼はほとんど私を無視した。私に気づいたのかどうかも解
らない。たとえ気づいていたとしても、「おう・お前おったのか」のレベル
以下であったであろう。素手の人間とオス熊の成獣では勝負にならない。
足柄山の金太郎は童話の世界の話だ。彼は沢を渡り切りやぶの中に消えてい
った。
 私は立ちすくんだまま暫く、茫然としていた。かなりの時間が経過しても
再び彼が現れるのではと、その場から動き出す勇気が出なかった。この時以
来私は単独での岩魚釣りは出来るだけ控えるようになった。

 私の友人に熊との遭遇経験が豊富な男がいる。以下は彼から聞いた興味深
い話。
 ある時小口川第3発電所への水平道を歩いていた時、突然大きなミズナラ
の木から熊が尻から落下して来た。ドスンと大きな音をたてて落ちてきた熊
は一目散に逃げて行った。当然彼もビックリ仰天、熊と反対方向に逃げた。
熊は彼が突然現れたのでビックリしたらしい。木登り上手な熊だが、木から
降りるのは苦手らしい。確かに熊が頭を下にして木から降りるのを見た事が
ない。
 またある時熊と至近距離で出会った、試しに笛を思い切り吹いてみた・・
が熊は全く反応を示さなかった彼の事を無視したまま、藪に消えて行った。
その時彼は熊鈴の効能が本当に有るのか疑問に思ったらしい。熊鈴は人が気
休めに使っているだけで、役にたたないのでは?私も早朝有峰ダム西岸線を
散歩中、至近距離で熊と出会ったことがある。まだ若い熊だったので、私も
心に余裕があった。私に気づいていないのか、私の方に下を向いたまま近づ
いてくる。私の存在を知らせる為、軽く柏手を打ったしかし彼はどんどん近
づいてくる。今度は柏手を何度も強く打った。漸く彼は私の存在に気づいた
らしく、私を上目づかいに見てゆっくり方向転換をして、山側の草藪の中に
消えて行った。

 ここで素朴な疑問、熊はヒョツトして耳が遠いのでは?家の猫は音源に対
して絶えず、耳を動かしている。動くような構造になってる。熊の耳の構造
は音源に対して動くような構造にはなっていないと思える。機会が有れば熊
の耳の動きを良く観察したい。先出の熊との遭遇経験の豊富な彼が言うには、
岩魚釣りで沢に入る時、熊への挨拶は爆竹が有効との事、打ち上げ花火は有
効性が低く、熊鈴は沢の音で全く聞こえない。爆竹はさすがに凄い音が連続
で鳴るので、熊も逃げるらしい。

 暫く前に乗鞍岳で熊の被害があったが、この事故の真相は最初に人が、大
きな音で熊を脅かしたらしい。驚いた熊が丁度来たバスに接触、なおも驚い
た熊が居合わせた人を襲った。熊にとってはとんだ災難だろう。大勢の人が
行きかう観光地で大きな音で熊を驚かす行為を非難すべきで、怪我をした人
と熊は被害者だと思う。熊と出会う機会の多いこの有峰に来て6年これから
も熊とは仲良く暮らしていきたいと思う。

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◆編集局からのお知らせ                 有峰森林文化村
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次号の有峰森林文化村新聞は、11月16日に発行予定です。
 6月~11月間は二週間毎に、12月~5月間は月1回、第3週の金曜日に発行い
 たします。
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                     有峰森林文化村助役(編集長)

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