******************************************************************
ありみネット http://www.arimine.net/

有峰村民の皆様と、ほぼ2週間に一度、双方向で交流するメールマガジン
有峰森林文化村新聞 2011年2月11日 第226号
編集/有峰森林文化村会議 編集長/羽座千敏
(発行日現在の有峰村民人口:725人)
******************************************************************
━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆有峰村民によるリレーエッセイ第11回 森岡夕子
 〜私と有峰〜
◆オレゴン有峰往復書簡第104回目 有峰からオレゴンへ    中川正次
 〜指でなぞって話を聞いた松下幸之助さん〜  
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
─────────────────────────────────
◆有峰村民によるリレーエッセイ第11回 森岡夕子
 〜私と有峰〜
─────────────────────────────────

私が初めて有峰を訪れたのはハタチの頃です。「大きな湖があるらしいか
ら見に行こう」免許取立てだった若者3人の大冒険でした。車1台通るのが
やっとの細い道。暗く細い洞窟のようなトンネル。通る車の数も少なく、
無事たどり着けるのだろうか・・この道はどこまで続いているのだろうか
・・・心臓がバクバク鳴りっぱなしの運転でした。
そのときの有峰湖の様子は思い出に残ることもなく、ただただあの恐ろし
い道だけが記憶に残ったのです。

それから何年か経ち、登山を始めた私は再び有峰を訪れました。あの恐ろ
しかった道は、すっかり広くきれいな道になっていて、とても驚いたのを
覚えています。その後も何度か有峰を訪れたものの、薬師岳だったり縦走
だったり赤木沢だったりと登山が目的だったので登山口のある折立に向か
うだけ。有峰は登山口のあるところという認識しかありませんでした。

こんな私に転機が訪れたのは子どもを出産してからです。
以前のように山に行けなくなったので、子どもを背負子に乗せて低山を歩
き始めました。また「森の子ども園」に参加し、森の中を歩くことを覚え
ました。
子どもと一緒に、ゆっくりとしたペースで歩くことで今まで見えてなかっ
たものに気づくことができるようになりました。
頂上に立たなきゃ意味がない!と思っていた私の大きな変化です。

一昨年、「森の子ども園」を通して有峰を訪れる機会を二度いただきまし
た。冷夕谷キャンプ場があることも遊歩道があることも知りませんでした。
今度は家族で大冒険!そんな気持ちででかけました。
気持ちが違えば、道中の気持ちも違うものです。車中から眺める景色に感
嘆の声。谷の深さ、湖の大きさにまた感激です。
キャンプ場も遊歩道も人の手が最小限しか入っていないと感じられ、自然
のありのままの姿に思われました。
そこでようやく、私は有峰が「大きな森」であるということを知ったので
す。
そして、どっぷりと自然の中に浸ることのできる有峰が大好きになりまし
た。

昨秋、紅葉を見ようと1年ぶりに家族で訪れました。
真っ青な空ときれいに色づいた山々を抱え、大きな森が変わらずそこにあ
りました。
二人目を出産後、山からも森からも遠のいていた私は、久しぶりの森歩き
が楽しくて仕方ありませんでした。
そのうち自分が森に吸い込まれているような、森のパワーで体が満ちてい
っているような、不思議な感覚になったのを覚えています。

この日初めて歩いた猪根山は、誰にも会うことなく(熊にも!)静かな森
歩きとなりました。
4歳の息子は落ち葉のじゅうたんを一生懸命にそうじ!?しながら歩き、
8ヶ月の娘も背負子の上でニコニコご機嫌さん。有峰湖や雪をかぶった薬
師岳の姿の美しかったこと!森の中で食べるお弁当のおいしいことったら。
家族で贅沢な一日を過ごすことができました。

有峰にはまだまだ行ってない場所がたくさんあります。
今年はどこを歩こうかな。冷夕谷でキャンプがしたい。囲炉裏のあるセミ
ナーハウス(有峰ハウス)にも泊まってみたい。川遊びもしたいし、緑が
生い茂る猪根山もきれいだろうな。
大きな森はきっと変わらずに私たちを待っていてくれるはず。
今年もまた有峰に出かけ楽しい思い出をたくさん作りたいと思います。

─────────────────────────────────
◆オレゴン有峰往復書簡第104回目 有峰からオレゴンへ    中川正次
 〜指でなぞって話を聞いた松下幸之助さん〜  
─────────────────────────────────

先日、ある講演会でパナソニック株式会社の人から、松下幸之助さんの話
を聞いた。パナソニックの旧社名は「松下電器産業株式会社」で、松下電
器産業の創業者は、松下幸之助さん(1894年- 1989年)である。

部下が資料を使って説明を松下さんにすると、松下さんは資料を指でなぞ
って話を聞いたそうである。私の経験では、暗記ペンや赤色鉛筆で印をつ
けながら聞く人はおられたけれども、指でなぞって聞いてくださった人は
思い出せない。

ケネディ大統領が、斜め読みの達人だったという話をどこかで読んだこと
がある。資料を作って説明をすると、ずんずん先読みする人が多い。斜め
読みできることが、頭のいいことの証明であるというものの見方が広がっ
ている。

いろんな聞き方のうち、指でなぞって聞いてくださるのが、部下にとって
最高である。部下の喜びを引き出す仕事の進め方が、結局、組織をよくす
る。

私もたくさん資料を作って人に説明してきた。その経験から、いい資料の
3要素を考えると次のとおりである。

1 構成が、しっかりしていなければならない。構成をしっかりさせよう
と思うと、5W1Hがはっきりしてくる。
2 各文を短くなければならない。文が短ければ、主語がはっきりする。
文を短くしようと思えば、「が」でつなぐ文が減る。「が」でつなごう
と思っていた内容を二つの文に分けると、後の文の先頭には、「したが
って」などの順接接続詞、あるいは、「しかし」などの逆接接続詞がつ
くので、文意のあいまいさが減る。
3 単純な表が必要である。文章は、上から下に流れるように書かれてお
りそのように読むものである。しかし、上から書かれたのではわかりに
くいことがある。そのために表がある。例えば、イチローの月ごとの安
打数。文の中で並べるよりも、表で表現されたほうがわかりやすい。し
かし、複雑な表を作ると何がなんだかわからなくなる。表は単純でなけ
ればならない。

最近、この資料づくりに新顔が出てきた。パワーポイントである。パソコ
ンで紙芝居式に作る。それを、プロジェクターという幻灯機でホールや教
室のスクリーンに映す。あるいは、パソコン上で相手に見せる。あるいは、
紙芝居を印刷して相手に見せる。そんなふうに使うためのソフトウェアが
パワーポイントである。

テレビ番組を見ていると、大きな板に資料が貼られており、要所要所が白
紙のカードで隠されている。司会者が説明をしながら、そのカードを外し
ていく。このテレビ番組のカード外しと同じことを、パワーポイントもで
きる。このカード外しのような芸当は、紙では不可能である。

カード外しを使わないにしても、パワーポイントを使って説明を受けると
わかったような気がする。しかし、深くわかっていないことが多い。やは
り、上から順番に書いてあって、必要に応じて単純な表があるやり方がよ
い。それを部下が説明すると、上の人が指でなぞって聞いてくれるといの
がよい。パワーポイントだと、指があっちにいったりこっちに行ったりす
る。一目瞭然というのは、反対に理解が浅くなる恐れがある。

インターネットやパワーポイントを使って表現できる思想の限界は、勧善
懲悪だと私は考えている。もっと深いことは、やはり本か声でないと伝え
られない。その例が9条である。日本には、誇るべき9条が二つある。日本
国憲法9条と歎異抄の9条である。

歎異抄とは、著者である唯円と、師である親鸞との対話録である。9条の
概略はこうである。

唯円が、「私、念仏を申しても、念仏すれば自然に生じるといわれる、
踊りたくなるような、とびはねたくなるような強い喜びの心がちっともわ
いてきません。これは一体全体どういうことでしょうか」と親鸞に尋ねた。
親鸞は、「実を言えば自分もそうだ。しかし、こんな私たちだからこそ、
阿弥陀様は救ってくださるに違いないと確信するのだ」と答えた。

私は、歎異抄の中で、この9条に一番感動する。こんな宗教書は、あまり
ないのではないか。たいていは、「お祈りの言葉を唱えると、心が安ら
ぎ、神のご加護を得ることができる」というパターンではないか。歎異
抄には、人間社会の常識の反対が書いてある。日本国憲法9条にしろ、歎
異抄9条にしろ、インターネットやパワーポイントを使っていては、なか
なか理解が得られない。

深いことは、本か声(事務室で、教室で、飲み屋で、有峰の遊歩道で・・
・)でないと伝わらない。インターネットやパワーポイントには、もちろ
ん、それなりの活躍分野がある。しかし、声や本を大事にしていかないと
大変なことになる。組織内での説明は、部下がきっちりした文と表を使っ
て説明し、上司が指でなぞるのが一番である。高校までの学校はどうなっ
ているのか知らないけれども、大学の授業では、パワーポイントがよく使
われているようである。大丈夫かなと心配である。

パナソニックの人から聞いた話を、2ケ月以上、頭の中で熟成させている
うちに、こんなふうに考えた。

参考 梅原猛の「歎異抄」入門(梅原猛著:PHP新書)。なお、梅原猛さ
んは、有峰森林文化村の村長である。

─────────────────────────────────
─────────────────────────────────
・ホームページ”ありみネット/文化サークル活動所/有峰デジタル画廊"
にどしどし 投稿をお願いします。(デジタル写真でも絵画(写真に撮っ
て)投稿ください。)
有峰森林文化村新聞は村民の交流の場として利用してください。
皆様からいただいた情報やご意見、感想を掲載しますので、どしどし投
稿ください。お待ちしております。
あて先は
info@arimine.net